《MUMEI》

「お願い!?…何?」

「ちょっと買い物付き合って」

「買い物?何でも買ったらええやん」

「じゃあ、いこぉ」
そう言って俺の腕を取った。
下の階に降り、向かった先は下着売り場だった。

「ちょ!ちょっと待って!?…こんな所、入れるわけないやん」

俺は生まれてこの方女性の下着売り場など来たことがない。

「いいじゃん(笑)お願い」
そう言って強引に連れ込まれてしまった。
「ほら、あそこにもカップルで来てるじゃん」

(この子何やねん、かなりテンション高いし、俺を振り回しやがって!)
俺は少し苛立っていた。

「ねぇ、これ可愛くない?」
右手でしっかりと俺の腕を掴んだまま、左手でハンガーに掛かった真っ赤な上下セットの下着をチラつかせた。

俺は、そっけなく
「あぁ、えんやない」適当に答えた。

彼女それに気づいたのか、商品を置き、
「ごめん…」
そう呟き、俺の腕を掴んだまま売り場を出た。
彼女は俯き加減で、
「ごめんなさい…あたし1人で来たことないから…
何か恥ずかしくて…
ごめんなさい…」
そう言って、売り場に戻って行った。

彼女の後ろ姿は、かなり淋しそうで、何点か下着を出していたが、選ぶ姿も哀しげに見えた。

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