《MUMEI》
早さ
夜はいつも母がついていた。聡も来ていたが、今夜は帰るにも、どうにも足が向かない。
千尋は8ヶ月に入ったばかりだ。
「聡、帰っていいのよ。明日も学校なんだから。」
「うん…もうちょっと。」
「お兄ちゃん、寂しいんでしょ」
千尋が笑顔でからかう。
「はいはい、それでいいよ。もう少ししたら帰るから。」
他愛のない話しをしてると、千尋がうとうとしてることに気付いた。
「千尋、もう寝るか?」
「電気消しましょうか?」
「いや、待って。おかしくないか?千尋。おい千尋。」
千尋は目を開けない。聡はナースコールを押した。
「母さん、千尋意識ないよ!先生呼んでよ!!」
駆け付けて来たナースに医師を呼ぶように頼む。
医師が駆け付けて来た。
「及川さーん、わかるかなー。目開けられる?」
医師の問い掛けにも一切返事がない。いつにも増して顔色が悪い。慌ただしく千尋にモニターや点滴、体中いろんな機器が取り付けられる。
医師は振り向いて、
「胎児の心拍数が落ちてます。母体も昏睡状態です。もう少し待ちたかったですが、もう猶予がない。帝王切開します。いいですね?」
聡も母もあまりの展開についていけず、たた頷くだけだった。
全ての準備が整い、千尋は手術室に運ばれた。
千尋はずっと夢見ていた。

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