《MUMEI》

「あーあ、折角の男前が……これは酷いなあ。」

恒明は何処からともなく現れる。
実に楽しそうだ。
打たれた痕は暫く残るだろう。

「顔出せ」

双子はよく同じ場所に怪我をしたりする。
多分そんなのは偶発的な現象であって確証もない信憑性の無い言い伝えである。
つまり、それを利用することも勝手ということだ。

同じ右頬へ、一発打ち付ける。

「……っ、手加減無しか。嗜虐趣味?」

自分が受けた痛みと、引き受けた苦情分を還元する、それだけの仕打ちをしたのだ。

だから、同じように打ち付ける。
間違いは無く、正解も無く、偶発に起こった出来事。

それをさもこちらから自発的に起こしたように言う。

「お前の趣向だろう。」

とは言いつつ、強要された訳で無いのに律儀に守ってしまっていることも否めない。


そこで一ツ発見したことは撲るより打つ方が清々しいということだ。
……打たれる方も。

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