《MUMEI》
「こんな事キレイさっぱり忘れて一緒に前に進もうって、蓮田が言ってくれたんだ」
――坂井って…こんなにも柔らかく笑えるんだ…、
坂井を…笑顔にした蓮田……。
「だから、もう良いから…」
坂井はすっと立ち上がった。
そして俺に背を向けたまま言った。
「俺、苛めも…、相葉の事も頑張って忘れる。
…だからもう、俺にした事気にしなくて良いから…
じゃあね
―――元気でな…」
――蓮田は…
坂井の記憶から俺を追い出した。
――究極の苛めだ。
―――負けた。
完敗だ。
―――――――――――――――
―――
――
―――
▽
「ねー、坂井裕斗って知ってる?」
「―――――」
「本当にそっちの方は疎いんだから!ほら!あのポスターの男だって!!」
―――言われるがまま壁を観るとそこには―――――
「カッコイイよねー、つかキレイ……」
うっとりとしながら女は呟く。
―――胸までしか写っていない…、裸の坂井。
白い腕にルージュが一直線に塗られ、そこに唇を押し付けている。
そしてこのポスター…、同じものが続けて3枚貼られている。
――実はとっくに、最近駅に来る度に眼に入っていた。
「このCM見た事ある?男でルージュのCM似合うのユウト位だよねー」
「そうか?なあ、もう良いから行こうぜ」
俺は女の腰に腕を回し歩き出した。
――あれから6年か…
坂井はまだ…蓮田と繋がりがあるんだろうか…――――――。
―――まあ、
俺にはどうでもイイ事だけど。
END
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