《MUMEI》

「こんな事キレイさっぱり忘れて一緒に前に進もうって、蓮田が言ってくれたんだ」




――坂井って…こんなにも柔らかく笑えるんだ…、





坂井を…笑顔にした蓮田……。








「だから、もう良いから…」







坂井はすっと立ち上がった。






そして俺に背を向けたまま言った。







「俺、苛めも…、相葉の事も頑張って忘れる。
…だからもう、俺にした事気にしなくて良いから…







じゃあね




―――元気でな…」











――蓮田は…
坂井の記憶から俺を追い出した。









――究極の苛めだ。




―――負けた。







完敗だ。





―――――――――――――――
―――



――
―――







「ねー、坂井裕斗って知ってる?」




「―――――」




「本当にそっちの方は疎いんだから!ほら!あのポスターの男だって!!」





―――言われるがまま壁を観るとそこには―――――





「カッコイイよねー、つかキレイ……」




うっとりとしながら女は呟く。






―――胸までしか写っていない…、裸の坂井。





白い腕にルージュが一直線に塗られ、そこに唇を押し付けている。





そしてこのポスター…、同じものが続けて3枚貼られている。






――実はとっくに、最近駅に来る度に眼に入っていた。




「このCM見た事ある?男でルージュのCM似合うのユウト位だよねー」



「そうか?なあ、もう良いから行こうぜ」






俺は女の腰に腕を回し歩き出した。






――あれから6年か…







坂井はまだ…蓮田と繋がりがあるんだろうか…――――――。







―――まあ、




俺にはどうでもイイ事だけど。









END

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