《MUMEI》

「……アンタ、見えてたわよ。」

犬の散歩していた早朝のことを示唆する。
早起きな姉だ。
七生と同じ瞳で見る。

「そうやって、私を笑っているんでしょう」

――――――欝陶しい。

「あの時と変わらない!」

いつのことだ。
以前の俺と何が違う、何が正しい。

「自分の利益しか考えないんだ。」

姉貴の顔は何て醜悪になるのだろうか。






出来れば姉貴とは話したくなかった。

「……当たり前じゃないか」

この答えを待っていたんだろう?
いつだって、俺は二郎へ与えられる利益しか考えてない。

「アンタ、不気味。
何考えてるか分からない、そのくせ人のこと逆上させるのばかり上手くて……。
死にたがってるみたい。」

彼女の言うことも無きにしもあらず……だろうか。

「……じゃあ、殺す?
本当はずっと怨んでいるのでしょう?
姉貴を売ったこと。」

お得意の短絡的で原始的な行動に移せばいい。

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