《MUMEI》

「はい…すみません、変な質問して」


自分でも、例えばの話でもしてはいけない質問だとはわかっていたが、…


訊かずにはいられなかった。


同じ『母親』の咲子さんの意見を。


「そうねぇ…私なら…」


私は咲子さんの言葉を緊張しながら待っていた。


「恨むより、他にいろいろ考えると思うわ」


「それは、何ですか?」


咲子さんは指折り数えながら、『いろいろ』の内容を語り始めた。


「私は何でうまく避けられなかったんだろう

やこは、せいこは熱が下がったかな?

私がいなくて、これから、家はどうなるかな?

食事は?洗濯は?掃除は?

衛はあれで意外と仕事以外は不器用だし…双子はまだ『お手伝い』レベルだし…
どうしようって、不安になるわ

私が死んで、衛がやこがせいこが不幸になっちゃったらどうしよう…って」


「お前のせいで死んだとは…思わないんですか?」


「少なくとも、私の知る一子さんも、私も…

『普通の親』は、そんな風には思わないわ」


(本当に?)


私は、更に質問した。


「親を死なせた子供が…幸せになってもいいんでしょうか?」


「何馬鹿な事言ってるの!」


咲子さんは叫んだ。

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