《MUMEI》

光二おじさんはともかく、祖父母は、私の幸せを願っていた。


「…いいんだよ、もう。蝶子ちゃんは俊君と一子に挨拶はした。

だから、もう、あっちの事は、気にしなくていい」


父は優しく、しかしはっきりとした口調で私に言って、今度こそ、工藤家を後にした。


(いいのかな?本当に…)


幸せには、なろうと思えた。


しかし、祖父母に理解されないまま、というのは、心苦しい気がした。


私は、胸に僅かな疑問を残しながらも、翌日は『クローバー』の厨房に立った。

『シューズクラブ』へ配達も行った。


それから、しばらくの間は、商店街の皆が心配して、交代で夜に『クローバー』に飲みに来てくれた。


去年と同じように


去年以上に、二つの夏祭りも楽しかった。


…今年は、チョコバナナを買うのが少し恥ずかしかった。


張り切って踊る俊彦が、見物する私を引っ張って、『一緒に踊ろう』と言って、孝太と俊彦に挟まれながら、私も踊った。


そして、八月に入りー


いよいよ、雅彦が『父親』に


結子さんが『母親』になった。


生まれたのは、父が教えてくれた通り、元気な男の子だった。

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