《MUMEI》
「じゃ、俺が長沢にして欲しい事は何だと思う?」
「―――聖ちゃんから、…俺に……」
長沢はその表情を変える事なく俺から視線をそらさない。
そして返事は…
直ぐに返された。
「――誓うよ、第一に俺は…、聖の事考える」
「もう一つあるだろ…」
俺は長沢の髪に指を差し入れた。
――もう、今の長沢に対して…、何の恐怖も感じない。
それどころか愛しささえ感じ、胸が切なく、苦しくなってきた。
「もう…」
長沢の腕がゆっくりと曲がり、俺に顔が近づいてくる。
整った鼻筋が俺の鼻筋をかすめ、熱い吐息を感じた。
「勝手に離れない…、ずっと傍にいるから」
・
深く重なる唇。
自然に絡みあう腕。
・
あんなにも押しのけ叩いた背中を
今は愛しく、きつく掴む俺がいる。
俺からもう勝手に離れないように……
ありったけの力をそこに込めた。
・
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