《MUMEI》

二人きりの車内…




意外と自然に会話も出来て、イイ感じ。




『いや〜部長に、急に佐々木物産まで行けって言われた時は驚いたな〜。』




『うそ〜。吉沢さん二つ返事で引き受けたじゃん。』




『まぁね。
でも内心は“マジかよ?”って思ったさ。
でも、一人じゃないし、百瀬さんとなら楽しいかもなって思った。』




『本当に?吉沢さんは誰にでも言いそうだから信用出来ないなぁ〜。』




『いや。マジだよ。
部長も俺たちを指名したんだから、きっと“名コンビ”だって思ってんだよ。』




『そうかな〜?偶然じゃない?』




『ま〜偶然だったとしてもイイじゃん。楽しもうよ。旅行気分でさ。』




“ふふっ。なんか可愛い。本当に楽しそうだなぁ。”




『そういや俺、去年…新婚旅行行ったきりで、今年はドコも行ってないや〜。』




“ドキッ”




『…新婚旅行はドコに行ったの?』




聞きたくないはずなのに、聞いてしまった。




現実を突き付けられても、吉沢さんを“知りたい”って思った。




『新婚旅行はね〜、オーストラリア!
嫁が行きたいって言うからさ。
俺は、飛行機苦手だし、オーストラリアの飯は合わないし…でいい思い出無いんだけどね。』




『…そっか。』




私は更に質問を続けた。




『…奥さんとの馴れ初めは?』




『いや〜恥ずかしいな。
馴れ初めっていうか…幼なじみってやつ。
高校の時から付き合ってて、大学卒業して、同棲。
で、去年結婚。
なんか、ありきたりだね。』




『…ふ〜ん。』




自分から聞いといて、分かりやすくテンションが下がった…。




『そっちは?
確か彼氏いないって前言ってたよね?
好きな人もいないの?』




“うっ!
そんな話した?
あ〜歓迎会の帰りに車の中で話したっけ?”




『…好きな人か〜。
…………いる。いるよ!』




何故か、ムキになってしまった。




『おっ。いいね〜!
百瀬さんのタイプってどんな人なの?』




『…うーん。言わない。』




『ははっ!なんでだよ?
いいじゃん教えてよ。』




“もう!…私のタイプはあんただよ!
あんたが初恋です。なんて言えるわけないじゃん!”




『やだ。教えないっ。』




『ひで〜な。俺には、さんざん喋らしといてさ。
じゃ〜どんな男にグッとくる?それだけ教えて。』




『……………ギャップ。』




“って私、どんだけ正直なのよ…。ギャップって今、数分前に吉沢さんに感じたんじゃん!”




『ギャップか〜。よく言うよね!女の人の言うギャップってなんなんだろ?
俺、全然わかんね〜わ。
はははっ。残念。』




“今日のあんたは100%ギャップあり男でしたよ〜!意識してないとこが、また悔しい〜!
あんたのそのギャップに私は、ずっとドキドキしてんだからね!
分かってんの〜!?”




私は心の中で叫んだ。

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