《MUMEI》

「今は大丈夫だけど、多分夏姉のとこと、同じパターンだよ」


俊彦の言う通り、村居のおじさんとおばさんは、今はすごく元気だ。


定年後は、夢だったという自給自足生活を、商店街から見える山で送っている。

「でも…それで、いいの?」


『夏姉のとこと同じパターン』とは、老人ホームに入る事だったので、私は気になっていた。


「いいの。今から予約してるし。
『子供の世話にだけはなりたくない』らしいから」


俊彦の言葉に、結子さんの両親は、『あの二人らしい』と納得していた。


すると、結子さんが『わからないわよ』と言って私を見た。


「蝶子みたいに可愛い『娘』ができて、蝶子似の可愛い孫が生まれちゃったら、おじさん、コロッと意見変えちゃうかもよ?」


「怖い事言うなよ…。親父の性格なら有り得そうで、シャレにならないから」


「どうして? 別に私は構わないけど?」


(村居のおじさん達は、昔から知ってるし…)


すると、俊彦は、『やだやだ!』と言って私を抱き締めた。


「ちょ、やめてよ。こんなとこ…」


『で』と言おうとした時、良君の泣き声が響き渡った。


結子さんが抱き締めても、泣き止まない。

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