《MUMEI》

「クロ…さん…練習試合で…タイムアウトって…」


「うるさいなぁ。息切れしながら突っ込むな。いいから黙って聞け!!」


前半10分でここまで息切れ?


想定外だ。


「ディフェンスは今の調子でいい。だけど、僕が速攻の指示を出しても無視しろ。」


「?」


疑問の顔を浮かべる。


「あれは癖で言っちゃうけど、無視していい。攻撃はゆっくりだ。守ったら椎名にボールを回してセットから決めろ。」


「俺たち…走んなくていいんすか?」


大分息が整ってきたな。


「速攻は行かなくていい。でも相手に速攻を出させるな。」


「…はい。」


「あと、サイドシュートだけど…」


「何すか?」


「スペースを開けた状態で打つのが定石で、さっきのも間違ってないんだけど…」


「?」


「無理矢理行け。スペースギリギリから。」


「サイドシュートをですか?」


「うん。そんでさ…」


「ピー!!」


「始めます!!」


「…わかったな?行ってこい!!」


「はい!!」


コートへ向かう選手。


「何だあいつら?」


「何が?」


「負けてんのにニヤニヤしてる…」

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