《MUMEI》
嫉妬
午後からは、結子さんの学生時代の友人が遊びに来るというので、私達は帰る事にした。


「どこ行こうか?」


商店街を歩きながら、私は俊彦に質問した。


最近、私達は麗子さんに言われてから、普通に昼間はデートする事が多くなっていた。


しかし、…この日は違った。


「もう、今日は家でイチャイチャする!」


「え?ちょ、ちょっと!」

俊彦は、駅に向かう途中で、『シューズクラブ』の前を通り過ぎようとした私の腕を引っ張って、裏口から事務所に入った。


「まだ、夕飯の買い物してないよ」


「出前とる!」


「明日の朝は?」


「コンビニ行くからいい!
いいから、部屋に行こう!」


「痛い!」


俊彦がグイグイ私を引っ張るから、私は思わず悲鳴をあげた。


「あっ…ごめん」


立ち止まり、謝ってはいるが、俊彦は相変わらず私の手をギュッと握りしめている。


「…急に、どうしたの? 変よ? 俊彦」


「だって蝶子が他の男に胸触られたりするから!」


「他の男って…もしかして、良君の事、言ってるの?」


私の質問に、俊彦は真剣な表情で頷いた。


(そういえば、友君にも嫉妬してたっけ)

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