《MUMEI》

私は以前、『弟』で『幼児』の友君に、電話で『愛してる』と言っただけで俊彦が不機嫌になった事を思い出した。


(多分、今回も、『赤ちゃんだから』って言っても納得しないんだろうなあ…)

考え事をしていると、俊彦は、手を離し、私の胸に触れようと両手を伸ばしてきた。


「やめてよ! こんな、昼間に」


私は俊彦の両手を掴んだが、俊彦は諦めない。


そのまま力を込めて押してくるので、私はどんどん後ろに下がり、事務所の壁に背中がついた。


「何で、こんなに嫌がるの? 良彦は大丈夫なのに」


「だって…俊彦、触り方、違うし」


「じゃあ、同じにする」


「え? …ヒャッ!」


俊彦が、私の耳にフッと息を吹きかけたので、私の抵抗していた力が弱まった。

俊彦は素早く私の両手首を掴み、私の頭上に持ち上げた。


「両手じゃないけど…」


俊彦は、本当にいつものように揉んだりはせず、良君のようにぺたぺたと私の胸を触り始めた。


柔らかく小さな良君の手と違い、俊彦の手はかたくて大きい。


その違いだけで…私は体が熱くなるのを感じた。


「蝶子…もしかして、感じてる?」


俊彦の嬉しそうな声に私は赤くなった。

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