《MUMEI》
お供・交錯
ー50年前ー
「またでたよっあのイタズラ化け狐がっ」
「畑を荒らして困ったもんよ!」
違う。
あの2人はー…。
「ほらっ山犬の双子!今日こそアイツらを仕留めないと、捨てちまうよ!!」
「「はい……」」
彼らは山犬族ではなく、狛犬族の双子、姉と弟。
そして捕らえなくてはならないのは、化け狐族ではなく、稲荷族の双子、兄と妹。
年も同じ彼ら。
狛犬の弟は、恐怖故に、目を包帯で覆ってしまった。
彼ら4人に、
名前などない。
安心などはー…ない。
「お兄ちゃんっ狛犬が、来た…!」
「っ…早く逃げるぞっ…何で何もしてないのに追いかけられるんだよ!?」
そう、全ては誤解。
林の中を逃げる稲荷、それを追いかける狛犬。
「あっ…!!」
稲荷の妹が転んだ。
そこに狛犬の姉が追いついた。
「…!!」
狛犬の姉と稲荷の妹の間に稲荷の兄は飛び出した。
妹を庇って。
狛犬の姉の鋭い爪が、稲荷の兄に刺さろうとした。
誰か
誰かわたし達を止めて
誰か助けてー…
交錯する思いは、つらく響く
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