《MUMEI》
お供・沙羅
鋭いその爪は、今にも刺さろうとした。


『やめてっ!』


思いの隠った言霊が林に響く。


そこを偶然通りかかった沙羅が、言霊を使ったのだ。


体が動かなかった狛犬の姉は、その場に座り込んだ。


「どうして狛犬と稲荷がー…何かワケがありそうだね。
話してくれる?」






「えーと、まとめると…狛犬の双子は山犬に間違われて拾われ、稲荷の双子は、村にイタズラしていた化け狐に間違われて
ー…………大変だったね、みんな」


沙羅は柔らかく言った。

「……とりあえず、狛犬は一度村に戻って?」


「で、でも…戻ったらー……」


沙羅は狛犬の双子の頭を撫でた。


「大丈夫。後で僕が行くから…、弟の方も、その包帯が取れるから」


何故、沙羅はわかったのだろうか。


恐怖から逃れるために包帯を巻いていた事が。



沙羅を信じて、狛犬は村に戻った。


「さてっと、稲荷の2人にお願いがあるんだ」


「何だ?」


兄の方が聞き返す。


「僕のお供になってほしいんだ。」


「「えっ?」」


沙羅はふと笑う。


「僕ね、言霊術師なんだよね。
それで旅をしてる、…、行くところがないなら僕の所へおいでよ」


それは優しく、暖かかった。


「お供に、してくれっ」「してくださいっ!」


久しぶりに優しさに触れたためか、2人は泣き出した。


「じゃあ、名前をつけてあげるよ。
そうだな〜、兄が六で、妹が五。どう?」


2人は返事をして沙羅に抱きついた。


「さて、次は狛犬の2人だね」





沙羅は与えた。


彼らに、名前と言う呪(シュ)を



そして安心を


沙羅が救ってくれた。

4人を

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