《MUMEI》
始まりの日
「お〜い、唱(となう)置いてくぞ〜。」
隣の 貴士(たかし)の声がする。


「あ〜、ちょっと待ってて。」
あわてて 身支度して 玄関を 出る。


「おっせ〜よ。唱、行くぞ。」


「へへっ、貴士 ごめんね。」


二人並んで 走って行く。


学校まで、あと少し。この 狭い路地を ぬければ…。

と その時、後ろから 猛スピードの 車が 突っ込んで来た。


貴士は 私を庇ってくれたけど、私は 電信柱に 頭を ぶつけてしまった。

「あっぶね〜な〜、大丈夫か 唱?」


「う〜ん、痛かったよ、こぶ 出来るかも?」


「唱〜これ以上 頭悪くなったら 入れる 大学ないぞ!」


「へん、いいよ〜。その時は 聡(さとし)兄さんの お嫁さんに なるもん。」


聡兄さんは 貴士の 5才上の 兄だ。
二人は私、唱とは 隣同士の 幼馴染みで、 私は 聡兄さんに 憧れていた。


「あ〜また いつもの現実逃避ですか?」

貴士は 笑った。


今日も いつもと 変わらない はずだった。

不思議な事が 起こるまでは…。

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