《MUMEI》
焔舞
火は何物も触れさせず、気高い。
紙の切れ端にマッチを擦り付けると全て忘れられる。

火になりたい。
燃え付くし、燃え殻にしてしまえば灰が風に吹かれ天上にでも昇れるかもしれない。

ぼんやり、火事の現場を野次馬と共に見上げた。

そんなものが至福だった。

要らない麻袋を羽織り、腰を屈め浮浪者のよう路地裏を歩く。
ポケットの中にマッチ箱を潜ませ、一本、マッチを入れるとなんとも高揚した気分になる。
まるで別の人間にでもなったかのようだ。


失敗したらそれまでだ。
直ぐにその場を去ればいい。

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