《MUMEI》

「…意地悪」


私は俊彦を見上げて睨んだ。


私は、俊彦の体に胸を密着させ…俊彦にほどかれた背中のヒモを何とか結ぼうとした。


「ちょ、動かないでよ!」

「だって、蝶子、イチャイチャ嫌なんでしょ?」


俊彦が、私から体を離した。


胸の前の布が、水で浮かび上がる。


私は、ヒモを諦めて、胸に手を当て、水着を押さえた。

今度は、ヒモが浮かぶのを感じた。


(どうしよう…)


これでは、プールに上がる時、…困る。


私は、麗子さんと琴子を探した。


麗子さんは、プールサイドで孝太に日焼け止めを塗ってもらっているし…


私は、プールにいるはずの和馬と琴子を探した。


(う…わぁ)


私は、抱き合って夢中でキスをしている二人を見て…

思わず、目を手でおおってしまった。


『ビキニを押さえていた手』で。


「キャ…」


バシャッ!


「…危ないなぁ」


俊彦が、私を抱き締めて、浮いた水着を掴んだ。


「ありが…って、俊彦が…っ…」


『悪い』と言う私の口を、俊彦の唇が塞いだ。


和馬と琴子がしていた濃厚なものではなく、軽いキスだった。


そして、俊彦は私に水着を着せた。

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