《MUMEI》
ナンパ
「蝶子、水着取れたでしょ?」


「れ、麗子さん?」


私は持っていたビニール袋を落としてしまった。


中に入っていたのは、地元の市場で買った魚介類だった。


私と麗子さんと琴子は三人で、夕食の材料の買い出しに来ていた。


男性陣は『心配だ』と口を揃えたが、麗子さんは『男がいるとサービスしてもらえないから』と、言って、付き添いを断った。


「大丈夫、見てないから。
あんなに嫌がってたのに、抱き合っててなんかおかしかったから。

あの水着は、そういう事だったのね」


麗子さんの言葉に、琴子は『確信犯』と呟いた。


私が返事に困っていると、麗子さんが『じゃ、戻りますか』と言った。


私と琴子は頷いた。


麗子さんが言った通り、若い女性達だからか、おじさん達がかなりサービスしてくれた。


私達は、三人並んで別荘への帰り道を歩き始めた。


「ねぇねぇ」


「はい?」


肩を叩かれ、私は振り返った。


麗子さんと琴子も、振り返る。


そこには、真っ黒に日焼けした三人組が笑顔で立っていた。


「何ですか?」


「重そうだね。俺達、車あるから、送っていこうか?」

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