《MUMEI》
お風呂。
今日はるちゃんはよく分からないけど学校の何かの発表みたいなのがあって泊まりがけでそこに行っちゃってる。

だから、今日は俺一人だけだ。

ご飯はみんなと食べたけど、お風呂は俺一人。




俺達がいる部屋からちょっと歩いて行くと共同の浴場があって、いつもそこでお風呂に入っていて、時間は自由だけど下手すると上級生に会っちゃったりするんで俺ら下級生は遅い時間に入ったりしている。

(誰も…居ないよね)

俺はあまり知らない人と、いわゆる日本伝統の”裸の付き合い”ってのが苦手だからいつもより遅い時間に入りに来た。

他の人が居ても、はるちゃんと一緒なら入れるんだけど…一人なんて初めてだった。




ドアを開けて脱衣所の中を見渡すと、幸い誰も居なかったのにホッとして急いで服を脱ぐと、スポンジボブのスポンジと石鹸を持ってお風呂の中を恐る恐る覗いてみた。

浴場の中にも誰も人が居なかったんで、急いで石鹸で髪から顔から全身を洗うと湯船の中に飛び込んだ。

(初めてだ…はるちゃんが居なくても、俺一人で入れたもんね♪)

全部自分一人で出来た事にホッとして、いつもは怒られるけど湯船の縁に頭をもたれ掛からせてお湯に寝そべるようにゆったりと浮かんでみたりした。




カラカラ…。

湯船に浮かんでまったりしていると、急に誰かが入ってくる物音がした。


(誰だろ、背…高い人だ…)


慌てて湯船に顔の半分まで浸かると、その入ってきた人の様子を伺った。

結構体の大きい…多分、上級生だと思う。

その人は俺に気付かないみたいで、普通にシャワーを浴びると湯船に入ってきた。


(うわっ、うわ///ど…どうしようι)


いきなり湯煙の中から”こんにちは”は変だし…相手も驚いちゃうかもしれないし…このまま隠れ通せるのか分からないし…。

色んな考えを小さな頭の中で駆け巡らせていると、突然その頭をポンッと優しく鷲掴みにされた。
  

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