《MUMEI》

「知ってるよ。」

「え?」

百花が姿を消して、すぐに先生は口を開いた。

「広崎が来週、誕生日だって・・・。」
私の顔はすぐ熱くなった。まさか、先生が私の誕生日知っててくれたなんて・・・嬉しくて、顔が上げられない。

「だって早く歳とってほしいし・・・。」

先生は子供みたいな言い方をして、微笑んだ。

私もつられて笑顔になる。先生は私の頭を優しく撫でた。気持ちが伝わる・・・。

携帯なんかなくても、こうやって会えるんだから、私は幸せなんだ。自分自身に言い聞かせた。



・・・そうは言っても、やはり私はまたあの携帯電話店の前で立ち止まってしまった。何かあった時、すぐに先生に報告したかったし、先生が不安な時、すぐに駆け付けたかった。それには携帯電話ほど有効な手段はないから・・・。
それが本音だった。

お気に入りの一台を手に取り折りたたみを開いた。
誰かが使ったままだったのか、カメラの状態になっていた。私はその画面をのぞく。道端の景色が鮮明に写った。携帯店横の路地に、小さい猫がいたので、その猫にカメラを向ける・・・

その時・・・
カメラの隅に、路地の奥で年配の男性と会話をしている成原さんを見つけてしまった・・・。

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