《MUMEI》

「…心配だったからな」


いつの間にか麗子さんの横には孝太が来ていた。


「もう、相変わらず変なのに目を付けられるんだから…」


「ごめん」


私は、俊彦の腕の中で謝った。


「確かに、蝶子は狙われやすいわね。…一緒に道場行く?」


麗子さんが強いのは、昔から空手を習っていたからだった。


本人は『趣味で軽く』のつもりだが、黒帯で、二段の腕前なのだ。


「俺が守るからいいの! 護身術位なら、手取り足取り教えてやるし!」


「と、俊彦…苦しい…」


俊彦があまりにきつく抱き締めてきたから、私は苦痛を訴えた。


「あ、ごめん!」


俊彦は、力をゆるめたが、まだ私を抱き締めていた。

「お二人さん。公道でイチャイチャしてないで、そろそろ戻るよ」


和馬に茶化されて、私は真っ赤になった。


「…ちょっと、今、ナンパ男に感謝しちゃったよ」


「何で?」


「だって、おかげで蝶子とイチャイチャ出来たから」

「…馬鹿」


「置いてくぞ〜!そこのバカップル!」


「ま、待って!」


和馬にまた茶化されて、私は慌てて俊彦から離れて走り出した。


俊彦は、そんな私を嬉しそうに追いかけてきた

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