《MUMEI》

「ねぇ、ところで、何で海に行かないの?」


新鮮な魚介類の下ごしらえをしながら、私は和馬に質問した。


別荘からは、すぐに海が見えるのに、何故プールを利用するのか不思議だった。

「プライベートビーチが無いから」


和馬はサラダのレタスをちぎりながら答えた。


今日はサラダも、刺身や海藻を乗せた海鮮サラダにする予定で、和馬の隣で琴子が買ってきた白身と赤身の刺身を食べやすい大きさに切っていた。


「海水浴場あるみたいだけど…」


別荘からやや離れた位置ではあるが、行けない距離では無かった。


すると、俊彦が『あんな危険な場所に連れていけるわけないだろ!』と怒鳴った。


(うるさい…)


私と俊彦は、並んで魚介類をフライパンで軽く炒めていた。


「危険て、何?」


「さっきみたいなのがうようよしてるってこと」


私達は、手を動かしながら会話をした。


「そうそう」


サラダのドレッシングを作っている麗子さんが相づちを打つ。


大きめの鍋を持ってきてくれた孝太も、無言で頷いた。


私と俊彦は、炒めた魚介類を鍋に入れ、水を加えて火にかけた。


シーフードカレーの煮込み時間は短い。

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