《MUMEI》

それは、肉のようにいつまでも煮てしまうと、魚は崩れ、他の食材も固くなってしまうからだった。


少し煮たところで、私は火を止め、カレールウを加えた。


辛さは、多数決で『中辛』にした。


幸い、このメーカーは辛さ調節ができるように、粉末スパイスが付いていたので、辛口派の孝太と麗子さんには、それをかけて食べてもらうということで、納得してもらった。


料理が出来上がり、私達はテーブル席に移動した。


『カレーには水でしょ!』と言う意見が多かったので、私達は、来る途中でくんだ湧き水をグラスに注ぎ乾杯した。


「はい、俊彦」


「わ〜い!」


俊彦は、せっかくのカレーにマヨネーズをたっぷりかけた。


皆、わかってはいるが、…眉間にしわを寄せていた。

「うん!うまい!」


相変わらず和馬は食べ方が汚く、隣の琴子が世話を焼いていた。


「ドレッシングうまいよ」

「まぁ、この位はね」


麗子さんは孝太の言葉に少し照れていた。


二人とも、食べ方が綺麗なので、落ち着いた雰囲気だった。


「蝶子蝶子!」


隣を見ると、俊彦が口を開けて待っていた。


「…自分で食べて」


「い〜じゃん!」

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