《MUMEI》

(どんなのが好きか…なんて…言えるワケないよ///)

俺、武に組み敷かれて…ワケ分かんなくなっちゃうくらいめちゃくちゃにされたい…なんて。

そんな事言ったら…武、どんな顔するかな…。




初めて武に出会った時、日本の昔の映画の…まるで颯爽と現れたサムライを見ているみたいだった。



長くて綺麗な黒髪がサラサラしてて、背がすっごく高くって、眉間のシワがセクシーで、捕んできた腕が物凄く力強くて逞しくて、心地よい低さで喋る声が俺の耳をくすぐってくる。

武は、俺に無いものを全部持っている。

武と仲良くしたい…友達としてでは無く…愛し合う、恋人として…。




「お前どんなの好きなんだよ〜」


(武が好き…)


「お前可愛い系だから可愛い子とか逆に似合いそうだな〜」


(全然、俺は武に似合う子になりたい…)


「お互いに同じ服とか着れそうだな♪」


(武は俺がたまにしてる女の子の格好見たら…どう言うかな…可愛いって言って女の子にするみたいな事してくれるかな…して…欲しいな…)


「おい…どうしたんだよι」

何だか泣きたくなって、涙が自然と溢れてきた。



どうして俺、女の子じゃなかったんだろう。


こんなに武が好きなのに…武の事考えるだけで胸が苦しくて頭が溶けてしまいそうになるくらい…大好きなのに。

何で武に似合うような…女の子じゃなかったんだろう。


「おいっ、泣くなよι…虐めてねぇぞ〜俺はι」
「うっく…うく…うぅ…///」

武は慌てて開いていた本を閉じると、さっと本棚に仕舞って『もうこの事は触れねぇよ』と俺を気遣うように言ってくれた。



そんな優しさが格好良くって…大…好き…///




気がついたら俺は武の逞しい身体に腕を回して抱きつくと、その柔らかくて温かな唇に自分の唇を重ねていた。

= = = = = = = = = = = = = = = =

男とキスするのなんて初めてだった。

でも、コイツは男とか女とか…そんなんじゃなくって……でも、オカマとかでもなくて…何て言うんだろう………天使か。


  天使


コイツを表すのに一番似合う言い方かもしれねぇ…。

「ん……」

唇が離れるのが名残惜しいくらい…すげぇ気持ちよかった///

キスって…こんなに気持ち良いもんだったかな…。




唇を離した後、かなたの顔を見ると、かなたは今にも泣きそうな顔して俺の事見つめてやがった。

その顔は、俺に嫌われたんじゃないか…って思ってるんだろうな。

「ゴメン…ね…キモチ悪いよね…男にキスされて…」

やっぱりかなたはそう言うと、震えながら目にいっぱい涙を溜めて、唇をキュッと結んで大泣きしてしまうのを堪えていた。

「俺っ、男の子で…武も男の子で…でも俺っ…武が大好きで…ごめんね…っ…ごめん…ヤだよね…」

ついには泣きじゃくりはじめてしまった。

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