《MUMEI》

赤高ボール。


「椎名。切り替えろ。」


「はい…」


(おいおい、まだ諦めるには早いって。引きずるなよ。)


椎名からのパスを受け取った峰田はすぐに感じた。


(パスが弱い)


それは桜井から見ても明らかだった。


(一個のミスでこんなに引きずるのか…、バカだな。余計やりやすくなるだけだよ。)


「椎名!!」


桜井がカットに出てきた。


「いただき!!」


椎名は、右腕を伸ばしパスを取った。


「片手キャッチ!?」


(やべ!!止まんね…!!)


飛び出してきた桜井をターンでかわし、空いたスペースへ切り込む。


すかさず…


二ノ宮がカバーへ。


「こっち!!」


カバーへ行った二ノ宮。
その空いたスペースへ、峰田が切り込む。


すかさずパス。


ポスト位置からのシュート。


「ナイッシュー!!」


13対10。


「ナイスインだったぞ!!」


「あのクソガキ…」


「不用意に飛び出すからだ。」


「ふん。まぁいいさ。こっからだろ。」





「クロさん?」


「ん?」


「今の椎名のプレーって…」


「…盗まれた。」


クロは身体能力の低さをスキルでカバーしてきた。


そして相手に隙を作る為に使っていた視線や表情のフェイク。


「練習試合の時と、練習の時、確かに使ってたけど、パクられるとはな。」


(それに僕まで騙すなんて…、生意気だな。)

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