《MUMEI》

なんとか試練の6時間も経ち、佐々木物産のある町内までたどり着いた…。




『あれ?早く着きすぎたね〜。俺、ちょっと仮眠してもいい?』




“仮眠って車の中で?”




って、いちいち反応しちゃうけど、吉沢さん結局1人でここまで運転してくれたし、疲れてんだろうなぁ〜と思ったりもして黙って頷いた。




『ありがと。』




と言うと畑の中にポツンとあるコンビニに車を止め、仮眠をとりはじめた。




私は気まずかったので、外にでて深呼吸したり、コンビニで立ち読みしたりして、時間をつぶした。




一時間ほど経った頃、吉沢さんが眠そうに目を擦りながら、コンビニに入ってきた…。




『あ〜寝た!朝飯買って、そろそろ行きますか?』




『うん。』




コンビニで朝食を買い、食べながら佐々木物産へと向かった。




『もう着くかな?』




と言うと、吉沢さんは赤信号になるのを待って、おもむろに着ていたつなぎをキチッと着直し、首もとまでジッパーを上げた。




斜めに被ってたキャップも正面に被り直した。




“いつもの吉沢さんだ。”なんて思いながら、お仕事モードに変わる瞬間が見れたことが嬉しかった。




佐々木物産に着くなり、




『この度は、ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした。』




と、綺麗な一礼をしてみせた。




私もつられて頭を下げたけれど、吉沢さんとは比べものにならないほど、下手くそだった…。




吉沢さんの真摯な態度と、手際よく荷物を下ろしていく姿を見て、佐々木物産の方も快く、許してくださった。




『やっぱり吉沢さんってすごい。部長が任せたのも納得!私も見習わなきゃ!』




私はいつにもまして興奮気味…。




『ははっ。オーバー過ぎ。佐々木物産の人がいい人だったんだよ。
あぁ〜でも安心した!』




『私も!これで無事、仕事クリアだし…。』




『いやいや。そうじゃなくって!最近さ〜、百瀬さん元気なかっただろ?
なんか気になってたんだけど、“どうしたの?”って聞くのもアレじゃん。
でも、部長のおかげで久しぶりに、百瀬さんの笑顔が見れた。
本当良かった良かった。
部長に感謝だな!』




『…吉沢さん。』




私は嬉しかった。
私がもっと素直な人間なら涙がでるくらい…いやっ!号泣してしまうくらい嬉しかった。




私、やっぱりダメだ…。
[吉沢さんが好き!]
この気持ちは、きっとずっと無くならない。




私が今まで臆病だったのは、本当の“恋”を知らなかったからだ…。




だって今なら、何の迷いも無く、吉沢さんに私の想いを伝えられる。
“フラれる”より“嫌われる”なんかより、この想いの方が断然強い。




結果なんてどうでもいい…と思った。




そして、私は人生初の[告白]をする為、静かに話し始めた…。

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