《MUMEI》
捕まえて
……バチン

……バシィ






耳の奥で鳴る。

これは肉が打たれる音。
廊下を反響し、
薄暗い部屋に向かう。



『―――――……!』

何か声がする。



『……―――っ!』

声じゃない。
鳴き声だ。


「この大馬鹿者め!」

父の鬼のような怒声、合わせて打たれた音。

その下で啜り泣く、自分。


「……ごめんなさい。  もうしませんから ……ああっ!」

もう一人の自分は父の足元を踞り泣く。
襖の隙間から影のように二人を覗く。



ぐったりした国雄と名乗った恒明が衿を掴まれ父に外まで引きずられる。

昼間であっても真っ黒な扉、一度外から閉ざせば開けるのは困難な強固さ。

彼は蔵に閉じ込められた。

放り込まれる寸前まで、悲鳴にも似た叫びで許しを乞う。






しかし、一度だってこちらの名前を呼ばなかった。

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