《MUMEI》
第二章:年長組と年少組
 Z学園には年長組と年少組とに分けられている。
 簡単に言えば、現在の小三から中二までが年少組、
 中三から高三までが年長組というわけだ。

「さて、一週間後に小学四年生になる予定のナイト・T・キャロル。
 その受験資格を今から失いたいのか」

 口より先に手が出てる。
 ゼウスはおもいっきりナイトの右頬を抓り上げていた。

「すひまひぇん」

 涙目になりながらナイトは謝る。

「それにゼルダ。高一にもなってナイトの魔力の暴発ぐらい予測できないのか?」
「面目ない・・・・」

 その頭にはたんこぶが出来上がっていた。

「とにかく、お前達はもう少し学習能力を養え。
 毎回テスト赤点ギリギリじゃやってられないだろう」
「うるせー、鬼軍師」

 二人はその場に沈んだ。
 軍師を怒らすことは死に繋がる。

「とりあえず、修業するなとは言わない。
 だが、寮の外では魔法その他爆発危険物使用禁止だ。
 守らなければどうなるか分かってるよな?」

 もはやいう必要などない。
 敢えて言葉にするなら死刑だ。

「分かったらナイトはさっさと風呂に入って宿題して寝ろ」
「ふぁい・・・・」

 腫れ上がった顔のまま、ナイトは自室へと戻っていった。

「さて、ゼルダ。俺が言おうとしてることは分かってるよな?」
「・・・・分かってるさ。
 ナイトの危険性は身をもって体験してるんだ。
 だけどよ、あいつは俺達にとって大事な弟分でもあるんだ。
 特別扱いみたいなことはしたくねぇし、ナイトだって嫌だろ」

 ゼルダの意見に間違いはない。
 それがこのZ学園の方針でもある。

「ああ、そこまでこだわる必要はないさ。
 あいつと同じ境遇に立たされている奴はこの学園にはいくらでもいるしな。
 だが、宇宙政府は待ってくれない」

 ゼルダは眉間にシワを寄せた。
 この宇宙すべてを支配しようとする権力主義者と武力集団が「宇宙政府」。
 表向きは全宇宙の星々を外敵から守るという正義の味方的立場だが、
 歴史は常に彼等を独裁者としてでしか語らない。
 Z学園のある時空・クリスタルは、
 宇宙政府から独立している唯一の砦というわけだ。

「・・・・それを跳ね返すのが俺達の役目だろ。
 年少組にきつい思いだけはさせないさ。
 せめてあいつが中一になるまではな」

 そう言い切るゼルダに、ゼウスは食堂の冷蔵庫からビールを取り出す。
 未成年の飲酒は控えるように言ってはいるが、
 そこまで真面目じゃないのもここの年長組ならではだ。

「とりあえず飲め」

 年少組にこの先数年は隠される事実がここにあった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫