《MUMEI》
告白。
『…吉沢さん。
運転しながら…そのままでいいので、私の話を聞いてください。』




『ん?どうしたの?』




『…ふ〜。
私が元気がなかったのは、吉沢さんのせいなんです。なんか気持ちがモヤモヤしてというか…ソワソワしてというか…。
とにかく、吉沢さんのことを考えないようにしても、元気がなくなっちゃうし。考えると、余計ダメだし…って感じだったんです。
…って、すみません。
意味分かんないですよね?私も自分で何言ってんのか分かんなくなってきた…。…じゃなくて、
…えっと〜
私は…
この3ヶ月間、ずっとあなたを見てました。
気が付くとあなたのことばかり考えてました。
私は…………
吉沢さんが好きです!!
…………………ってことが伝えたかったんです…。
すみません…。本当に。』




“言った!!
言ってしまった…。
吉沢さんビックリしたかな〜?どうしよう…。”




吉沢さんは、しばらく黙ったまま、運転を続けてた。




心なしか…少し困ったような顔をしているように見える…。




“このまま、ずっと黙ったまま帰るのかな…?
やっぱり言わない方が良かったかな…?
…………どうしよう?”




なんて悩んでいると、車が急に止まった。




『…俺。』




『はい!』




吉沢さんが話し始めた事に驚いて、声が大きかった。




『…あの〜。俺……。
……………ごめん!』




“………………。”




『…ごめん。俺、知ってると思うけど、結婚してるんだ。…だからごめん。』




吉沢さんの答えはやっぱりNOだった…。
というより、私は“付き合ってください。”とも言えなかったのだから、答えも何もない…。




『…分かってます。』




私はその一言しか言えず、その後は、ただ涙を堪えていた。
“ここで泣いたらダメ!”と精一杯、自分に言い聞かせ、流れていく景色を見ていた。




同じ道のはずなのに、行きと帰りでは景色が全く違って見えた…。




続く沈黙……。




もう、話しかける勇気が無かった……。




“早く着け!”
心の中でそう願っていた。




長い沈黙の後、ようやく見慣れた景色になり、あと一時間ほどで着くかな…と安心した時、




『…百瀬さん。
ちょっと寄り道してってもいい?』




と言われ、驚いた。




『……うん。』




不思議な気分で答えた。




それからしばらくして、高速を下り、見慣れない住宅街へ入っていった。




『…着いたよ。ここ。』




吉沢さんの指差す前には、真新しい一戸建ての家…。




ガーデニング用の草花が綺麗に飾ってあって、とてもおしゃれな家…。




ふと、表札に目をやると、



[吉沢]




と書かれている。




『え!?吉沢って!?
ここ吉沢さんの家!!?』




『そう!上がって。』




“なっ?なんで〜!!?”

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