《MUMEI》 生まれては死んでゆく。 心を侵す恐怖は、 一時の優しさに触れ消滅してゆく。 オレは昼前に目覚め、 あの日と同じ様に彼女を残し家を出た。 日差しが強く、道端に積もる雪は眩く光る。 オレは魂が、少しずつだが強く呼吸をしているのに気がついた。 閑静な住宅が並ぶこの景色の中に、 オレの様な絶望と栄華に浸る人間が何人いるのであろうか? 皆がそれぞれの事情を背負い生きているはずなのに。 言葉を交わさなければ、 永遠にその人の苦痛は解放されない。 オレは何とか意識を保てている。 莫大な決心と覚悟が背中を押し続ける。 すれ違い続ける世界に、 オレもまた、 確かに存在している。 前へ |次へ |
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