《MUMEI》

母に出来る全ての儀式が終え、

従兄弟がオレに「立派だった。」 と声をかけてくれた。


別れの時はいつでも一瞬に感じる。


火葬場での事や送迎バスでの事、

納骨の儀式の全ての事が一瞬に思えた。


この目が捉える景色は相変わらず偽物色を帯びている。


今ここに、


存在しうる母の姿がないからだ。


オレ達には母の純粋なる強さが必要だった。

あらためて、

オレの人間的弱さを思い知る。


この日を迎えるまでの5日間、

何度も挫折を味わい、

何度も恐怖と不安と向き合い、

何度も絶望に押し潰されてきた。



絶望とは、運命に負けを認めた時に訪れる。


母を見送る事、

感謝を込めて餞する事が最初の生きる糧であった。


いま、

母の生身の姿はない。


それでも母を知り、愛した者の全ての中に永遠に生き続ける。


永遠など、


口にするだけで頼りなく、


現実性のない言葉。


だからこそ、


失った時に


初めて実感出来るのであろう。


永遠の言葉の意味を。

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