《MUMEI》
〈第七話〉鬼の子供と櫻の木の精霊
…誰じゃ?わらわを 眠りから 醒ますのは?…


…赤子?泣いておるのか?…


わらわは 古(いにしえ)の昔より ここに 棲む 櫻の木の精霊。


精霊も千年超えると 妖(あやかし)の類いになる。


人の姿に 身を変え 赤子を 抱き上げる。


腹を空かして おるのか?わらわは 乳は でぬぞ。困った。


ふと 赤子をみやると、頭に布を巻いておる。不思議に 思い 取り外せば 小さな角が 一本 生えておる。


…鬼の子供であったか?まてよ、鬼の子なら 生気を喰ろうて 生きるはず…


わらわの生気を 指先から 赤子の 小さな口へと 送る。


…おお、おお、喰ろうておるわ。満足したのか すやすやと 眠っておる。


さて どうしたものか?
鬼の元へ 還さねばならぬが わらわは この地を 離れる事は できぬ故…


鬼が通りかかるを待つか 赤子が 大きゅうなるを待ち 鬼の里へ行かせるか?


どちらにせよ、わらわが 暫し 預かるとしょう。


こうして 鬼の子と櫻の木の精霊の 生活は 始まりました。

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