《MUMEI》
緊張
私と琴子は、台所の冷蔵庫から、カクテルの入った缶を取り出した。


(日本酒…入ってないよね?)


缶を真剣にチェックしている私に、琴子が『大丈夫』と声をかけてきた。


「和馬がちゃんとチェックしたから」


「…ありがとう」


私の日本酒癖は、花見で皆に知れわたってしまったから、恥ずかしかった。


「こんなに美味しいのに、飲めないなんて、残念ね」

先にリビングに移動していた麗子さんは、孝太が置いていった一升瓶のふたをポンと開けて、手酌でコップに注いでいた。


それから麗子さんは、私のお酌で一杯・琴子のお酌で一杯同じ日本酒を飲んだ。

それでも麗子さんは顔色一つ変えなかった。


(すごいな…)


私と琴子はまだ一缶目だった。


琴子は私よりアルコールに弱いので、既に赤くなり始めていた。


麗子さんが、一升瓶を空にした時、『ただいま』と声を揃えて、男性陣が戻ってきた。


俊彦と和馬は、少しぐったりしていた。


(あれからずっと孝太に怒られてたのかな…)


私と琴子は、同じ事を考えていただろうが、二人とも、何気ない顔で『何かあったの?』と質問した。


和馬は『別に』と答えた。

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