《MUMEI》

みるみるうちに炎は赤々と拡がる。

頭に血が上った。
辺り一面に炎で埋めつくされ、足場は無い。

家に火を点けた。


ずっとそうしたかったのだろう。




恒光が用意した鞄も燃えている。

「国雄……!国雄!」

なんと、弱々しい声を出すのか。

自分に近付く恒光はまるで鏡を見ているように醜かった。

人肉が焼ける臭い。
爛れた色みの仮面。

煙の中で見た自分自身だ。

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