《MUMEI》

「そっ…っ…」


脇腹にも吸い付かれ、私は慌てたが、俊彦はビクともしなかった。


「じゃあ、虫に刺されたって言えばいい」


「ッ…」


更に別の場所に吸い付かれ、息が上がってきた私は、去年孝太が俊彦を『悪い虫』と言っていたのを思い出していた。


「肌もいいけど、こっちも…」


「アッ…ン…」


俊彦は今度は私の胸の突起に強く吸い付いた。


「やっぱり、いいな…」


「っ…のに…」


私は、私の胸を揉んでいる俊彦から顔をそらした。


(琴子みたいに大きい方が好きなんでしょ)


以前俊彦は『そんな事無い』と言ってくれたが、琴子の胸が大きいと言っていた俊彦は、何だか嬉しそうに聞こえた。


「何怒ってるの?」


俊彦は胸の愛撫をやめ、私をそっと抱き締めた。


「怒ってなんか…」


「嘘」


俊彦は、私を真剣な眼差しで見つめた。


「…だって…俊彦…」


「ん?」


俊彦は優しく髪を撫でてきた。


(もう、嫌だなぁ…)


俊彦は変わらず優しいのに、疑ってしまう自分が、自信がない自分が嫌だった。

『蝶子だってできるわよ』

その時、麗子さんの言葉が頭をよぎった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫