《MUMEI》 「そっ…っ…」 脇腹にも吸い付かれ、私は慌てたが、俊彦はビクともしなかった。 「じゃあ、虫に刺されたって言えばいい」 「ッ…」 更に別の場所に吸い付かれ、息が上がってきた私は、去年孝太が俊彦を『悪い虫』と言っていたのを思い出していた。 「肌もいいけど、こっちも…」 「アッ…ン…」 俊彦は今度は私の胸の突起に強く吸い付いた。 「やっぱり、いいな…」 「っ…のに…」 私は、私の胸を揉んでいる俊彦から顔をそらした。 (琴子みたいに大きい方が好きなんでしょ) 以前俊彦は『そんな事無い』と言ってくれたが、琴子の胸が大きいと言っていた俊彦は、何だか嬉しそうに聞こえた。 「何怒ってるの?」 俊彦は胸の愛撫をやめ、私をそっと抱き締めた。 「怒ってなんか…」 「嘘」 俊彦は、私を真剣な眼差しで見つめた。 「…だって…俊彦…」 「ん?」 俊彦は優しく髪を撫でてきた。 (もう、嫌だなぁ…) 俊彦は変わらず優しいのに、疑ってしまう自分が、自信がない自分が嫌だった。 『蝶子だってできるわよ』 その時、麗子さんの言葉が頭をよぎった。 前へ |次へ |
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