《MUMEI》

「母上〜。」
風花が 元気よく 走ってくる。


「母上?今日は 起きていて 大丈夫なのか?」

瞳を まん丸く 開いて 桜花の顔を 覗き込む。


その仕草が 愛らしくて、そっと 頭を撫でてやる。


「心配せずとも 良い。ほんに 風花は 優しい子じゃのう。」


頬を赤くして 満面の笑みを 浮かべる 風花を 微笑んで 抱き締める 桜花。


「腹が 空いたであろう?」
そう言い、桜花は 抱き締めた 風花に 生気を送る。


身体から 生気を 吸い込む。


「母上、いつも ありがとう。」
何も知らずに 微笑む。


桜花が 日に日に 弱っていくのは 生気を 与えているから…。


いかに 長寿の櫻の木と言えども、ここ何年も 生気を 抜いていては 力が 保てぬ。


…冬風の 心配は 的を得ていたのだ。

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