《MUMEI》

「桜花、大丈夫か?」
冬風は 心配そうに 聞く。


「おう、冬風か?心配せずとも 良い。」

と笑うものの、青い顔では、説得力がない。

「ふ〜」と溜め息を付き、桜花が 冬風を 見つめた。


「冬風、頼みがある。」


「なんだ?桜花」
珍しい事もあるものだと 桜花を見た。


「そろそろ 人の姿を保てぬようだ。そうなれば、風花にも 生気を 与えてやれぬ。」


…やはり そうであったか…

冬風は 頷いた。


「風花を 一本角の鬼の里へ 送り届けてくれぬか?」


「数えの九つになる。まだ幼い風花を 旅立たせるのは 辛いが ここに 居ても 餓死させるだけであろう。」

「桜花は 死ぬのか?」
冬風は 尋ねた。


「わらわは 長く生き過ぎた。このまま ユルユルと 朽ち果てようぞ。」


「ここ数年 ほんに 楽しい日々で あったぞ。風花と冬風、そなた達のお陰じゃ、礼を申すぞ。」


「この馬鹿者が…」
冬風が 呟いた。

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