《MUMEI》

「ありがとうございました!!」


ハンドボールは…


時に残酷なスポーツだ。


どんなに点差があっても、最後まで逆転の可能性のある野球やテニスのようなスポーツと違い、大差がつけば実質的に敗けが決まる。


後半になれば、諦める選手もいるだろう。
コートに立っていることが辛い選手もいるだろう。


もう追い付けない。
一生懸命やったって無駄だ。


そんな気持ちが試合中によぎる。


しかし、今日。


後半のタイムアウトを取った後、『もういいや』と思う選手はいなかった。


「今日はありがとうございました。無理なお願いだったのに…」


「いやいや、ウチも課題が見つかったよ。ありがとう。」


「力付けてくるんでまたお願いします。」


「うん。待ってるよ。」


(…次はぶっ倒す。)


表情には見せなかったが、選手たちと同じようにクロも悔しかった。

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