《MUMEI》
期間限定の彼氏。
気が付くと、外はもう暗くなってた…。




私は、吉沢さんに聞いた。




『…奥さんを愛してる?』




『…あぁ。』




『じゃ〜私は?』




『……愛してる。』




『2番目に?』




『……分からない。』




こんなやりとりをしてるなんて、不思議だった。




でも、私の答えは決まった。




『…吉沢さん。
私もあなたを愛してます。何番目かなんて…どうでもいいよ。
私と条件付きで付き合ってくれませんか?』




『…条件付き?』




『…そう。
条件1…私達は、吉沢さんの子供が産まれるまでの付き合いにすること。
条件2…吉沢さんの子供が産まれたら、すべて忘れること。
条件3…私と付き合っている間も一番に奥さんを愛し続けること。
…この条件で、私たち付き合いませんか?』





私の意表をつく提案に吉沢さんはまた、困り果てた。




『…そんな条件のめないよ。それじゃ君が傷つく。』




『私は、傷つかないよ。
…大丈夫。だって、私達付き合えるんだもん。
そうでしょ?』




しばらく、考え込んだ吉沢さんは眉間にシワを寄せ、大きく深呼吸をした。




『百瀬さん!俺と……こんな俺で良かったら付き合ってください。』




“私が初めて告白した日は、初めて告白された日になった…。
そして、初めて彼氏が出来た日になった…。”




誰にも言えない恋人だけど、期間限定の恋人だけど、何の迷いもためらいもなかった…。




私は、大きな声で、
『はいっ。喜んで!』
と叫んだ。




そして、




『居酒屋かよっ!?』




ってツッコんだ吉沢さんに飛び付いた…。




『本当にいいの?』




私を抱き締めながら、不安そうに聞いてきた。




吉沢さんはまだ迷ってるのかもしれない…。




『…いいよ。次、同じ事聞いたら、罰金ね!』




私は、笑い飛ばした。




だって幸せだったから。
どんな形であれ“両想い”になるなんて奇跡的なこと。




特に私は25年間も、この奇跡に出会えなかった…。




大切にしたい!




その気持ちでいっぱいだった…。




新婚生活を送っていた家で私達は一夜を共にした。




と言っても“大人の関係”はなかった。




ただ…意味のない話をして、二人で笑いあっていた。




“不倫”なんてドラマの中だけだと思ってたのに…。




私たちの関係も周りが知れば、ただの“不倫”で片付けられてしまうのかもしれない…。




でも私は幸せ…。
私が望んだことだから…。




これから、吉沢さんとの秘密の生活が始まる…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫