《MUMEI》

彼女はジュースを飲みながら地図を覗き込んだ。
「目的地決まった?」

「いや、全然…」

「じゃあ、一緒に香川に来る?」

ここから香川に行くとしても、俺は高速を使う気はないので、
「俺は、下道をボチボチ走るよ」

そして、ここから『今治』に続く峠を走る事にした。

「あっ、そう言えば、ここの中庭に足湯があるらしいよ」

「足湯?」

「うん、せっかく『道後温泉』まで来たんやから足湯位は入らな損やろ(笑)」

「(笑)じゃあ、行ってみる?」

「よし、じゃあ、俺はフロントに寄ってから行くから、先に行っといて」

俺は、荷物を持ってフロントに向かい、会計を済ませた。

彼女は店舗側のエレベーターから中庭に向かった。

中庭に行くと、20センチ位の深さの川の前に竹で出来たベンチが並んであり、彼女はそこに座って足を浸けていた。

「あったかくて気持ちいいよ」

俺も、靴下を脱いで浸かってみると、程よい暖かさで気持ちがいい。

「ああ〜…最高!!」

「ホント、気持ちいいね」

15分位で、体まで温まってきた。

「じゃあ、そろそろ行こうか?」

「うん」

玄関のタクシーに乗り、デパートに向かった。

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