《MUMEI》

「一族の恥め!」

父が怒鳴り散らす。

「父さん、〈恒光〉は悪くありません。
何故なら、国雄は恒光だったからです。
女関係の都合が悪いときは優秀な恒光に入れ代わって貰い任せたのです。
恒光は……小さな時の壷を割って代わりに自分が罰を受けたことに負い目を感じていて言いなりでした。

自分が放火を始めたことも知っていて、放火場所にわざわざ偵察させていました。
恒光を利用したのです。

そして、兄さんに見付かったあの日、遂に恒光に命令しました。

憎い女が居たのです。

その女を殺す為、その場所に火を点け注意を向けさせていろ――――――と。


恒光は自分を救えなかったことを責め苦に自殺をしようと蔵に火を……

自分のこの顔は、女の怨念でしょう。」

恒光が、まるで真実を語るような出任せを言った。

しかし、女は確かに恒光が殺したようだ。
刺した痕が見付かったのだ。

恒光は最後まで自分に〈国雄〉という名前を返さなかった。

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