《MUMEI》




「ゆうちゃんの携帯点滅してるぜ?」

先に着替えた俺は裕斗に光るそれを渡してやった。

「あれ?隆志からじゃん…」



――そういえば…
もうだいぶ前の事になるんだよな…。





裕斗に惚れてはいたが今じゃ加藤君の恋人になった潮崎君…。

今だに時々こうして電話やメール位の付き合いを続けているこの二人…。




既に…、いや、とっくの前々からお互いに何とも思ってないのは分かっちゃいるが俺的に本当はあま〜り良く思っていない。




まあ、俺は裕斗よか遥かに大人だからよ〜…イチイチそれ位の事でぐずぐず言いたくねーしよ。



――――……




てか俺より、あの情緒不安定な加藤君、良く割り切って平気でいられるよな…。



気になんねーのかなあ……。





裕斗は電話をかけながら備え付けの草履を履き庭に出た。




――――。




「――ゴメン、隆志…何?




……――え?


…惇が?――――分かった、

うん…、


そう…うん、


―――うん、

―――――

―――……わかった…」





「―――秀幸…、速攻帰るぞ」


「何かあったのか?」

ただならぬ雰囲気…。


裕斗はバッグを掴みながら…、



「――惇が倒れた…」



「え?」



「――もしかしたら…俺のせいだ…」



「―――ゆう…ちゃん?…」








厳しい表情の裕斗と共に料亭を…後にした。




とりあえず倒れた事実は実家には伏せる様潮崎君に言われたらしく、




笑顔の女将さんを不憫に思いつつ後にした訳だが…。








すっかり運転に慣れた裕斗が高速を走らせた。
















途中何処も寄る事なく、東名では珍しい位順調に進み、8時前には首都高を降りる事が出来た。

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