《MUMEI》

「もしかして、祐介君に春到来かい?」


小声で囁く父に、私は『かもね』と答えた。


その後、私達は祐介さん達と一緒に行動した。


歌穂子さんは、本気で祐介さんを好きなように見えた。


(ただなぁ〜)


肝心の祐介さんが全く気付いていないし、歌穂子さんを『年下の親戚の子』としか見ていなかった。


(私や父さんでもわかるのに…)


祐介さんは日頃から『彼女がほしい』と言っている割には、恋愛感情に鈍感だった。


「ねぇねぇ祐介、お盆休み明後日まででしょう?
明日はどこ行く?」


「あ? 明日は帰るよ。勇と中学の同級会出るから」


「え〜!」


きっぱり言いきった祐介さんに、歌穂子さんはがっかりしていた。


「同級会から生まれる恋もあるかもしれないし」


歌穂子さんの気持ちに気付いていない祐介さんは、ウキウキしていた。


祐介さんと、お子様二名を除いては、皆歌穂子さんの気持ちがわかっているから、複雑な表情になった。


「もっと、一緒にいたいのに…」


「お前だって友達と遊んだり、同級生と恋すればいいじゃん」


(うわぁ…)


聞いているこちらがハラハラした。

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