《MUMEI》
マネージャー、いつもの一日
――芸能人は変わった人間が多いって聞いてたけど…、
まさか始めてついたタレントが本当に変わっていたから、もうただびっくりの毎日を僕は…過ごしている。
▽
「古川君、じゃー2時間後にね」
僕の担当のタレント、坂井裕斗、僕より5歳年下の20歳。
ニッコリ微笑みながら僕の愛車を降りた。
童話なんかに出てきそうな森の仲間達が一緒に踊ってるんじゃないかって位、ご機嫌な足取りでマンションに消えていった。
――ここは個性的実力派俳優、伊藤秀幸のマンション。
そう、うちの坂井は男である伊藤秀幸と…恋人関係にあるのだ。
本来ならば、タレントの恋人の存在は事務所に届けなければならない決まりなのだが、とても僕の口からは届ける勇気がない。
だってそんな事言った暁には逆に僕が事務所を首になりかねない!
――そう、この事は僕と坂井と伊藤さん三人の秘密なのだ…。
▽
いつものパーキングに車を停め、僕は雑誌を開いた。
今日坂井が移動中に買った四コママンガ。
坂井はとにかく四コママンガが好きなのだ。
――♪♪♪♪♪
「はい!坂井君どうかした?」
『頼みたい事あるんだけどさー…いいかな?』
はいはいはい!
タレント様の頼みを聞くのはマネとして当然の仕事です!
「――いいよ!何?」
――すると坂井君は…とんでもない事を俺に頼んできた。
「―――」
『―――ムリだよね』
「む、ムリじゃないっす!」
そんな悲しそうな声で言われたら誰だって断れない!
つかマネはタレントさんのしもべです!!
「直ぐ買って持ってくからね!」
▽
僕は急いで薬局に行った。
そしてドキドキしながらインターホンを押した。
紙袋を持つ手も顔も耳も変に熱い。
するとガチャと音がして坂井が現れた。
「ゴメンね?」
「…い、いえ……」
真っ白いバスローブを纏った坂井。
めっちゃ真っ赤な顔してて、前髪が多分汗で額に張り付いている。
坂井は俺からコレを受け取ると
「――ソファに座って待ってて」
と言い、奥の部屋に消えてしまった。
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