《MUMEI》 えがお1度だけ、訊かれたことがあった。 数学の自習時間。 神崎は中間服の袖をまくってたから、6月ぐらいだったと思う。 数学の問題が解けなすぎて暇になったあたしは、 いつものごとく、黙々と問題を解く神崎の横顔を眺めていた。 長いまつげに、すっと通った鼻筋。 バランスがいいんだよなー、なんてことを考えていると、 「…なに」 不意に、その形のいい唇が動いた。 例のごとく、神崎はあたしに横顔を向けたままだったから、 最初は、その言葉があたしに向けられてることに気付かなかった。 「…へ?あたし??」 聞き返すと、神崎はあたしに顔を向けた。 「おれの顔、なんかついてる??」 …いつも見てんの、ばれてたんだ!! 焦って答える。 「ご、ごめん!なんか、見てて飽きないってゆうか… 嫌だったよね、もう見ないから!!」 すると、 しばらくしてから神崎は、ふっと笑った。 「…変なの」 そして、また横を向いてしまった。 『もう見ない』と言ってしまった手前、神崎に視線を向けるのを一旦はやめた。 でも、それは習慣になってたらしく。 無意識に視線が端正な横顔へと向いてしまった。 そこで神崎と目が合ってしまい、 あたしが慌ててごめんと言うと、 神崎は、少し眉根を寄せたあと、 そのあと、困ったように微笑んだのを覚えてる。 前へ |次へ |
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