《MUMEI》 懺悔ジィさんは、恒光に庇われたのだ。 「――――恒光が、自分を逃がそうと蔵に荷物を用意していた。そんな事、望んでいなかった……。 全てを捨てたくなり、蔵に火を点けて終わりにしようとした。 それも恒光は許さなかった。助けられ罪を被られた、揚句、出所して一年で癌で亡くなった。」 ジィさんと俺が同じなのは名前だけでは無かった。 腹の底に鎮めた感情が、似ている。 「〈国雄〉で居たかったんだ。 ジィさんを誰より幸福にしたかったんだよ。」 恒光がジィさんにここまでする理由なんて一つしかない。 「……昔の自分達を見ているようだったよ。 その点、こちらの国雄は素直だ。」 柴犬に俺達の名前を付けるなんて中々面白い。 「……尻尾振ってる」 警戒心が無い。 俺が不法侵入出来るくらいだからまあ、仕方ない。 番犬としてはうちのツンの方が優秀かもしれない。 「ジィさんがよっぽど好きなんだな……」 無意識に出た言葉になんだか笑いが込み上げてきた。 前へ |次へ |
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