《MUMEI》

良いのかなぁと思いつつ僕は小さな小さな声でお邪魔しますと言い、言われた通りソファに座った。▽




さすが伊藤さんは一流の俳優。

広いリビングと何気なく高そうな調度品に見とれているとそれは突然起った…。


「ぁあ〜ん、…ぁっ、…はぁん、…ぁ〜ん…――」



――まさか!!



――……いや、当然の事が起ったまでだ。




坂井の甘い喘ぎ声がひっきりなしに聞こえてくる。

僕は気まずくて立ち上がるが、ソファで待ってろと言われたのを思いだし無理矢理踏み留まる。


「あ〜ん!もっとぉ」



「〇★*£してっ!」



「はあぁ、イっちゃ〜う!」








――僕も思わず…ティッシュに向かって吐きだしてしまった。




少しすると上半身裸にスエットを履いた、くわえ煙草の伊藤さんが出てきた。




僕の存在に気がつくなり苦虫を噛み潰した表情になり



「おい〜!ゆうちゃ〜ん!」



と寝室に戻って行った。



暫くごちゃごちゃもめていたが少し静かになった後きっちり着込んだ坂井だけが現れた。



「仕事遅れちゃう、行こう?」



満面の笑みを僕に向ける僕の担当のタレント…。




ポケットの中のティッシュは絶対にばれてはいけない…。





―――この事は僕だけの秘密…。






仕事場に向かう中、坂井はずっとメールを打ちっぱなし、受信しっぱなしだった。



そして仕事帰り、坂井はコンビニで僕にサンドイッチやジュースを今日も買ってくれた。



「あのローション良かったよ、有り難うね」



とんでもない台詞を笑顔でさらりと言われ、そういえばまだティッシュ、ポケットの中な事を思い出してしまった。





――そしてその後、





また伊藤さんのマンションに送らされた。







――これは
僕のいつもの
日常の
―――出来事。











END

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