《MUMEI》

もう何年も運転している様なハンドル捌きでナビの指示に従い都内を突き進む裕斗。







今の裕斗の横顔にいつものどこかいい加減さを含んだ、相手に甘え頼る色は全くなく、変わりに女だったら誰もが堕ちるだろう力強い色を湛えていた。






途中潮崎君から電話があり、落ち着きを取り戻した加藤君を自宅のマンションに送ると伝えられた。





運転中の裕斗に代わり俺が応対をした訳だが…、




加藤君はもうたいしたことはないと言うわりに、潮崎君の口調は、何故か酷く重いものだったし、


そして安心しても良さそうな情報を聞いた裕斗もまた、険しい表情を崩す事はなかった…。





――腹減った…。





高速降りてからが混みだし、もう9時を遥かに過ぎた。




便所にも行きたいわ環八はギュウギュウに動かないわで、正直この状況に俺はいらついてきた。





「な…、今日は潮崎君に任せてよ、お前は加藤君とこ行かねえ方がいーんじゃねーのか?…どう考えたって後一時間はかかるぞ?」



「―――そんな訳にいくか…、親友が倒れたんだぞ、――例え日付変わったって俺は行く」





――逆の立場だったら惇は必ず来てくれる奴だから…と小さく付け加えられ、俺は何も言い返せなくなる。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫