《MUMEI》
隆志視点
「―――――」

「―――」

「――――」






――惇を送ってきた先に待ち受けていたもの。




それはあまりにも惇にそっくりな…
兄貴の存在だった。




帰りの途中、二子玉川に差し掛かったところでそれは起きた。


惇は無言のまま、メールを打ち終え携帯を閉じた途端、突然呼吸を荒く乱しだした。




たまに出る過呼吸だからと惇は慣れた様子でいつも持ち歩いているビニール袋をバッグから出し、その中で呼吸をしだした。




俺は一応…と思い、直ぐ一番始めに眼についたコンビニの駐車場に入り、エンジンを直ぐに切った。




『水買ってくるな!待ってろ』



『ヤだ、はぁはぁはぁ、一人に!はぁしない…はあはあ』



気がつくと惇からは袋を出した時の冷静さがぶっとんでいた。


惇は苦しげに涙を流し俺のシャツを握ってくる。


ドリンクホルダーを見ると惇のお茶が少し残っている。



俺は惇のバッグを掴みいつも薬をいつも入れている財布を引っ張りだした。

『薬飲んで』


『ヒッヒッ…はあはぁはあはぁ、ムリ、ムリ、はぁはぁはぁはぁ』


口元に薬を持っていくも頭を激しく振り拒絶する。


そして袋を突然放りなげ


『空気!さんそ欲しい!!はあ、ハアハアハアハアハアハアハアハア、苦しい!助け…て!ハアハアハアハアハアハアハアハア、あっ、も、たかしぃ!!』

俺の膝に必死にしがみつき全身から汗を吹き出し、涙と唾液でグシャグシャになる。

いつもの過呼吸は袋だけで直ぐに治まって薬飲んで終了だった。

惇もその度冷静に解決していたから



いや、こんな激しいのは始めてみた!!


『惇!惇!!』



俺は必死に名前を呼び背中を擦る事しか出来ない。



すると次第に呼吸がゆっくりになり、俺にしがみつく力も緩くなってきた。



『――よかった…落ち着いてきたな』


『―――』


真っ赤になっていた耳も白く変わり俺はほっとして。



『冷たい水…買ってこようか?』



『――――』


『―――?』



呼吸が落ち着く以前に僅かな吐息さえ感じなくて…



『じゅん!!?』



俺は惇の肩を掴みバッと上体を持ち上げた。



『じゅん!!』




――顔を真っ青にして…気を失っていた。




俺はとっさにコンビニに入り救急車を頼んでいた。










――そして15分後には俺達は病院に向かう救急車の中にいた。

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